崖の家
崖の家
所在地:宮城県
主要用途:専用住宅
構造:木造
規模:地上2階
建築面積:195.86m2
延べ面積:231.73m2
竣工:2020年
構造設計:清水構造計画
照明コンサルタント:大光電機
キッチン:ホルツ
施工:巧友技建工業
撮影:越後谷出
段丘崖の岬のような地形の突端に位置する住宅である。敷地の北側は仙台市街が一望できる。かつて地元の名士が別邸のために開発した土地であり、この恵まれた眺望を暮らしの中に豊かに取り込むことを主眼に設計が始まった。
土地のもっているポテンシャルを最大化することをが私たちに与えられた使命であると考えた。土地の形状なりに幅いっぱいの空間を切り取り、切り取られた空間は眺望に正対できること。そのうえで、南からの太陽の恩恵を受け取りながら、近隣からの視線を制御する必要があった。
具体的には眺望に対して広がりをもつ東西に幅の広い門型のフレームが構想された。敷地の幅に応じた全長10mの門型のフレームが、北から南に@455で反復配置されることで構造体が形成された。フレームはLVLの60×360でできているが、1枚の柱に対して2枚の梁が組まれている。敷地が接する道路が狭隘で搬入可能な材にも限界があったため、梁はジョイントして10mのスパンを実現している。
さらに南北に対しては開口を超えてフレームが延長され、日射をコントロールする庇であり、バルコニー、テラス、ガレージといったバッファーをなしている。このバッファーに守られた門型フレームのなかにメインの生活空間、寝室、浴室を配置している。門型のフレームの中には1層分の高さのボリュームが挿入され、南の近隣の視線から守っている。このボリュームにはキッチンが機能として与えられた。
門型空間は施主からの提案により全館空調設備を採用しているが、これによって温度差が小さく抑えられているため、ダイニング・キッチン・リビング・プライベートリビング・和室・主寝室がおおらかにつながるひとつながりの空間であることを許容している。
また、敷地東側に壁のように屹立するボリュームを配することで、門型フレームを東側近隣からの視線から守っている。壁のようなボリュームはオーディオルームを内包している。3重に吸音された壁・天井、躯体床で構成された内部は音響的に別世界となり、施主の念願だった音の世界に耽ることのできる専用空間を実現した。
大きな門型の中に生活の場が散りばめられ、日々の暮らしに非日常とも思える豊かな眺望が寄り添う住まいができたと考えている。