O博士の家
O博士の家
所在地:宮城県仙台市
主要用途:専用住宅
構造:木造
規模:地上1階
建築面積:89.46m2
延べ面積:89.46m2
竣工:2006年
施工:菅原建設
撮影:SOYsource建築設計事務所
「塀の反転」がこの小住宅のコンセプトである。
敷地は仙台市郊外に位置する新しく開発された住宅団地。かつて山であった場所に脈絡もなく突如として現れた住宅団地であり、頼るべきコンテクストなるものはほぼ皆無であった。しかし、敷地の近傍のみを見ると、四方のうち一方が道路。二方が歩行者専用道路に面しており、労せず樹木や植栽が手に入る。この三方は将来においても残されることを約束された空間であり、私たちは敷地をこの空間まで拡張できる可能性があると考えた。
そこで敷地の四周に塀を巡らせて周辺から切り取るのではなく、反対に敷地内部に壁として屹立させた。この「塀の反転」により敷地外部の空間を含めた四つのスペー スを得ることができた。本来敷地と敷地の間にある塀は、家の中心にその場所を移し、敷地を十字に貫通する壁となった。この黒壁は、敷地を四つの白い部屋とそれに連続した四つの庭にわけ、分けられた空間はそれぞれ部屋から庭へ、さらに敷地の外へと広がっていく。周辺環境を巻き込みながら、郊外型住宅の単調なリズムを崩すと同時に、「自分の庭」のみならず、文字通り垣根を越えた領域のありかたとして、ひとつの可能性を提示できたのではないかと考えている。