I邸
I邸
所在地:宮城県仙台市
主要用途:専用住宅
構造:RC造一部補強CB造
規模:地上2階
建築面積:188.57m2
延べ面積:288.33m2
竣工:2015年
構造設計:市場建築構造設計事務所
照明コンサルタント:梅田かおり(Lighting Design Studio LUME)
家具デザイン:渡辺吉太 アトリエセツナ
施工:アトリエ海
撮影:越後谷出
築50年が経過し、現代の生活スタイルとのずれが生じてきたRC+補強CB造専用住宅の改修である。1960年代に建てられ、施主がその少年時代を過ごし、1970年代に家族の拡大に応じて増築がなされ、現在では母親が一人でほどんど隠るように暮らしていた住宅を、震災を機に同居を決めた施主が二世帯で暮らせるよう改修する、という計画。
設計にあたり、改修前は二階にあった母親の生活領域を一階で済むように平面計画を組み直した。構造上不要な間仕切り壁を整理して余裕のある共用スペースを確保し、キッチンやユーティリティなどは動線の回遊性を確保している。将来を見越したバリアフリーへの対応として動線上の段差の解消と車いすの有効幅の確保に努め、建具も引戸に替えている。暖房計画においては、発泡系断熱材を吹付け、高性能サッシに取り替えるなど、建物自体の断熱性能を高めた上で、床暖房とパネルヒーターによる輻射熱暖房を導入し、室内の温度差を極力抑え、身体への負荷を和らげている。
一階は、50年前の建設当初はビロティと物置であったこともあり、躯体の梁底で1,900程度であった。この天井の低さをフォローするべく、木フローリングや大判タイルといった質感のある素材を床仕上に用い、かつ天井面を間接照明の柔らかな光で満たして意識を床面に向けた。一方で後年に増築された範囲は十分な天井高があったため、あえて高低差を強調しメリハリのある断面構成として狭隘感がないようにしている。室内に現れてくる既存の梁形は間接照明やカーテンボックスを組み込むことで機能を与え、形態に意味付けをしている。
外観は外部からの視線を柔らかく受け止める南洋材の小断面ルーバーによって整え、前庭はメンテナンス上の配慮からドライなハードペイブへ更新している。